「いつもどおりの食事をしているのに吐き気や下痢が止まらない」
「最近手足がしびれるようになった」
「背中が痛いのがずっと続いてる」
正体がわからない症状が続くと誰しも不安なもの。市販薬を飲んでも効果がなかったり、受診しても異常なしと言われたり・・・一体なんなのこれ? 早く治したいんだけど・・・
そんな悩みを持っている人は、疲れや年齢や更年期のせいにせずに、ストレスによるうつを疑ってみましょう。原因不明の体調不良が二週間以上続くようなら、うつの初期症状の可能性があります。
誤解されやすいのですが、うつの初期症状が表れるのは心だけではありません。身体の症状もあり、しかも人によってかなりバラバラです。
吐き気などのわかりやすいストレス症状なら発見しやすいのですが、下痢や肩こりなど一見してそうとわかりにくいものもあります。
それに気づかずにうつを発症してしまうと、下手すると一生モノ。辛い気持ちを死ぬまで引きずる羽目になります。そう考えると、少しぐらいの遠回りは安いもの。
健康で生き生きとした人生を送るために、自分を冷静に振り返ってみませんか。
精神科を受診することを怖れない
精神科と聞くと、あまりいいイメージがありせんよね。
「精神病になった」などと言われると、まるで頭がおかしい人のような印象を持つ人も多いでしょう。
そのせいもあって、多くの人は内科、せいぜい耳鼻科ぐらいまでしか受診していません。
しかし、こころに起因しているのだとしたら、精神科でなければ正しい診断はできません。抵抗があるかもしれませんが、必ず精神科を受診してください。
そもそも、現代ではうつはありふれた病気です。
厚生労働省によると、平成の一桁ごろまでは40万人程度でしたが、それから急激に増加し、平成20年代には100万人前後にまで膨れ上がっています。
うつを含めた精神疾患の患者数は年間300万人以上。
ちなみに交通事故の死者数は近年4,000人前後です。
この数字を見るだけでも、精神科を受診するのはごくありふれた行動だといえます。
受診した結果、何もなければそれでいいんです。初期症状と診断されてもむしろラッキー。まだ後戻りがききます。
最悪なのは心と体の悲鳴を無視して我慢を続けたあげく、受診した頃にはすでに重度のうつを発症していたパターンです。
こうなると、下手すると一生治らずに気分が沈んだまま。そんな人生は誰だって嫌です。
僕の知り合いでこの最悪のパターンでうつになった人が3人いますが、発症して5年以上経った今も誰一人治っていません。ずっと苦しんで、自宅で親や家族の世話になり続けています。
そんなうつの怖さを近くでまざまざと見せつけられているので、もし自分がうつになりそうだったら、どれだけ周りに迷惑がかかっても逃げようと心に決めています。
うつはれっきとした脳の病気。環境が変わらない限り自然に治ることはありませんし、まして気合や根性で乗り越えられるものでもありません。
まずはしっかりとした休養。場合によっては服薬やカウンセリング。そして何より治療を焦らない姿勢が必要です。
仕事を辞めることに抵抗がある人も多いでしょう。しかし、もしうつと診断されたなら、ブレーキを踏むタイミングは今しかありません。遅れれば遅れるほどコースアウトの危険性が高まります。
うつ病のシグナル
うつ病のシグナルは多くの場合、心と体の両方に出ます。以下に主な例を挙げますが、ここにない症状でも二週間以上続くようであれば受診して症状を話してみましょう。
こころのシグナル
・落ち込む
・悲しくなる
・イライラする
・楽しさを感じない、興味がわかない
・悲しくないのに涙が出る
・不安感
・辛い
・頭が働かない、ミスが多くなる
・極端なマイナス思考
・自分を責める(価値がない、全部自分の責任だ)
・死にたい
・何もしたくない
・誰にも会いたくない
・被害妄想(みんなが自分の悪口を言っているなど)
・性欲がなくなる
体のシグナル
・動きが鈍くなる
・不眠
・頭が重い、痛い
・めまい、立ちくらみ
・吐き気
・耳鳴り
・腹痛
・下痢
・便秘
・肩こり
・手足のしびれ
・背中の痛み
精神科受診の判断ポイント
・「こころのシグナル」「体のシグナル」に一つでも当てはまっている
・「こころのシグナル」「体のシグナル」がずっと続いている
・「こころのシグナル」「体のシグナル」で内科や耳鼻科を受診したことがあるが、改善されなかった
全部あてはまるのなら、ぜひ精神科を受診してみてください。
うつは早期発見・早期治療が原則
うつは軽度のうちに気づいて対処することが極めて重要。いつ気づけるかのタイミングは大げさではなく一生を左右します。
うつは軽度であれば、頑張れば働くことができてしまいます。
そのため責任感の強い人ほど休むという選択肢をとれず、余計に症状を悪化させてしまいます。
ようやく受診したときにはすでに重度になっていることも。
いずれにせよ、治療の原則は十分な休養。ストレスの原因から離れてのんびりゆったり過ごすことが重要です。
発症の原因が仕事なら、仕事をしながら治療することはまず不可能。ストレスがない環境で休まないと治りません。
軽度の場合は充分な休養さえとれればそれだけで回復する場合があります。
中~重度のうつは休養に加えて、服薬が不可欠。
ときにはカウンセリングなども併用しますが、治療は年単位で下手すると一生引きずります。
うつを疑ったら、一刻も早く精神科にかかる。
うつと診断されたら、一刻も早く休む。
こういう姿勢が必要です。
退職・休職のときに捨てるべき考え方
退職・休職を考えたときに、あっさり決断できる人なら心配はいりませんが、中には色々なことを考えて踏みとどまってしまう人もいます。
しかし、人生にはブレーキを踏むべきタイミングがあります。そこでアクセルを踏み続けると、待っているのはコースアウトです。
ここではブレーキを踏むことを躊躇してしまう考え方について解説します。
周りに迷惑がかかる・申し訳ない
「辞めたら自分の尻拭いを誰かにさせることになる。そんな迷惑はかけたくない」
責任感の強い人ほどこんなことを考えてしまいます。むしろそんな性格だからこそ、体調を悪くするまで頑張ってしまうのでしょう。
しかし一番迷惑をかけるのは、精神を病んで休職してしまうことです。
うつは一度発症してしまうと、休職したからといって簡単には治りません。
まともな会社なら、治らないからといってすぐクビにはできません。
こうなると困るのはチームです。
1ヶ月で戻ってくると聞いていたのに、復帰予定日直前で診断書が出て、1ヶ月伸び、2ヶ月伸び、結局いつ戻ってくるかわからない。やっと戻ってきたと思ったらまた再発してすぐ休んでしまう。
よくあるパターンですが、こんな感じで見通しがつかないのが一番困ります。それならいっそいない方がまだやりやすいのです。
だから無理してまで続けると、結局は周りの迷惑になってしまうし、今後ずっと家族に面倒を見てもらうような生活になるかもしれません。
本当に周りの迷惑を考えるなら、区切りをつけて引く勇気を持つことです。
世間体が悪い
「精神病院に通院しているとか、精神病で休んでいるとか、そんなの恥ずかしくて周りに言えないよ」
たしかに抵抗があるのはわかります。周りに噂されて気持ちのいいものではありませんからね。
ですが一度、少し先の未来を想像してみてください。
①悪化する症状を抱えたまま後戻りが効かなくなって、ろくに働けなくなった未来。
②早めに治療したことで健康な体に戻って、またがんばって働いている未来。
精神治療を恥と考えるなら、ドロップアウトして家にこもっているのも恥です。さて、長く続くのはどちらの恥でしょうか?
たとえいっときの恥でも、過ぎ去ってしまえば将来笑い話にできる日が来るでしょう。ですがずっと続く恥はその渦中で苦しみ続けることになります。
キャリアや出世に響く
「出世がかかってるんだ。いま休んだら取り残される」
出世が大事なのはわかりますが、一度立ち止まって考えてみてください。
いま出世したら、あとで休めるようになるのでしょうか。
その目算が立っていればまだいいのですが、職位が上がれば責任もプレッシャーもそれに応じて重くなるのがふつう。楽になることはあまりありません。
出世競争に勝ち抜いた先に待つのは、今より厳しい出世競争です。休む暇などありません。
今でさえ体調を悪くしているのに、今後本当に耐えられますか?
覚えておいてほしいのですが、休むのは敗北ではなく一時的な撤退です。
心身が健康でさえいられれば、いくらでも挽回はできます。
しかし健康が損なわれれば、その時点でレースは続けられなくなります。
あなたはどちらを選びますか?
退職を決めたときにやること
退職の意志が固まったらやることがありますね。
いつ辞められるの?
本当にやめられるの?
どうやって辞めるの?
そういった退職時に必要なことを下の記事にまとめました。実際に退職を決めたら読んでみてください。
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退職の引き止めに遭ったときは?
退職の相談をして、サクッと辞めさせてくれるようならOK。
しかし、そこは人間対人間の関係があります。
本来、労働者が退職の意志を示しているときは、会社は法律上止めることはできないのですが、現実はなんやかんやで引き止めにあったりするもの。
そんなときにどう対処するか?ということを別記事にまとめました。退職を引き止められたときは参考にしてください。
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まとめ
・原因不明の体調不良が続いたら精神科を受診する
・うつなどの精神疾患と診断されたら思い切って休む・退職する
これまで何度も言ってきたように、重度のうつになったら一生引きずります。これは何が何でも避けなければいけません。
会社は一生あなたの面倒を見てくれるわけではありません。
自分の面倒を見られるのは自分だけ。
あなたの人生に責任を持たない他人に判断を任せてはいけません。
何よりも心身の健康あってこその人生です。