気が弱い。
メンタルが弱い。
度胸がない。
意気地なし。
こんな性格だと何かと損ですよね。僕もまったく同じなので痛いほどよくわかります。
同僚は怒られてもケロッとしているのに、自分は一度怒られたら何日も引きずってしまう。
ちょっとしたことにもビクビク反応してしまうし、いつも周りの顔色を窺ってしまう。
どうして自分はこうなんだろう。
もっとどっしり構えていられるようになれば人生もっともっと楽しいんだろうなあ。
面の皮の厚い人が羨ましい。
・・・なんて考えてしまいますよね。
こんなとき、僕たちは「気が強くなる方法」や「怒られても平気になるメンタルの持ち方」といった、自分を変える特効薬を求めてしまいがち。
ですが、持って生まれた性質はおいそれと変えられません。僕もネットで検索して、あるいは本を読んで、色々試してみたけれど、結局どれも効果がありませんでした。
自分を変えることができないまま徒労感だけが残り、「一生このままビクビクし続けて生きるしかないのかな・・・」と悲嘆にくれていました。
そんなときに出会ったのがこのHSPという言葉です。
この言葉を知ってからというもの、僕はかなり気持ちが楽になりました。自分はこういう気質で、それは変えられない。だったら、こんな自分でも心地よく生きられる場所を探そう。そんなふうに考えられるようになりました。
自分を変える魔法の特効薬はありません。でも、自分と自分を取り巻く状況を正しく理解できれば、こんな僕たちでも心地よい生き方は見つかります。
自分を理解する第一歩として、今回はHSP(敏感気質)についての理解を深めましょう。
HSPとは
HSPとは"Higyly Sensitive Person"の略で、直訳すると「とても敏感な人」。
周囲の出来事や、周りで起きていることに対して過敏に反応してしまう人のことで、アメリカの心理学者エレイン・N・アーロン博士が提唱した概念です。
何に過敏に反応するかは人によって様々で、主には他人の感情ですが、他には音、匂い、光、電磁波など。
センサーが通常の人より優れているがゆえに、大量の情報をキャッチしてしまいます。
受け取る情報が多いということは、それだけ脳の処理量も多いということ。常にフルパワーで情報を流し込んでいれば、脳はすぐに疲れます。そのためHSPは疲れやすいのです。
HSPは病気ではありません。「楽観的な人」「怒りっぽい人」などとと同じ、その人の気質です。
HSPはレアな気質ではありません。アーロン博士によると人口の15~20%存在すると言われており、ごくありふれた気質です。
センサーが発達しているため、ふつうの人より刺激をより大きく感じやすく、またささいな刺激さえ拾って反応してしまいます。そのため、他の人が気にならないようなところで一つ一つ引っ掛かってしまい、消耗が激しく疲れやすいです。
HSPは先天的なもの
HSPは先天的なもの、生まれ持ったものであることがわかっています。
ささいな刺激にも反応してしまうため、人より疲れやすかったりしますが、それは決して努力が足りないせいでも怠けているせいでもありません。先天的な本人の気質なので、努力して変えられるようなものではないのです。
HSPの特徴
これからHSPの特徴を解説していきます。
なお、すべて当てはまらなかったからといってHSPでないとは限りません。
刺激に敏感に反応する
HSPは脳の情報処理量が人より多く、ささいな刺激でも拾い上げてしまいます。そのため頭が疲れがち。
脳の疲れは肉体の疲れとは異なるため、他人からは「たいしてキツい仕事もしてないのに疲れたなんて怠け者だ」と評価されてしまいます。
他人の影響を受けやすい
感受性が発達しているため、他人のネガティブな感情の影響をモロに受けてしまいます。
相手の気持ちが乗り移りやすく、隣に不安な人がいると自分も不安になってしまったり、相手がイライラしていると自分も落ち着かなくなったりします。
勘がいい
HSPの人は直感が優れています。
あまり説明されなくても内容がわかったり、わずかな仕草から人の隠し事や、この人とこの人は付き合ってる、または仲が悪そうだといったことを見抜いたりします。
マイペースを好む
人に合わせると疲れてしまうため、自分のペースで進めることを好みます。
あれこれと注文を詰め込まれると、うまく進められないばかりかパニックになってしまうことも。
慎重
HSPは丁寧で慎重、コツコツと仕事をします。
その丁寧な仕事ぶりが評価されることもある一方、仕事が遅いと言われることも。
一人でいることが好き
HSPは他人からの影響を受けやすく、情報処理量も多いため、長時間人と一緒にいると疲れてしまいます。
また自分の内側をじっくりと見つめる傾向があり、良く言えば考えが深いとも言えますが、悪く言えば色々なことに悩みがちです。
HSPは一人でいても孤独を感じることはあまりなく、内面をじっくり見つめるために、むしろ必要な時間と言えます。
自分を責めやすい
自分にほとんど責任がないのにすべて自分の責任だと思い込んだり、ときにはまったく非がなくても自分が悪いと感じてしまいます。
その理由は、悪意も含めた他人の感情を読み取ってしまうことと、考えが自分の内側に向かう傾向があるためです。
そのため、本当は違うところに原因があっても、自分ばかり見つめて「自分が悪い」と結論してしまうのです。
こうしたことを繰り返すうち、何もかも自分のせいな気がして、より「自分はダメな人間だ」と思い込んでしまう傾向があります。
HSPの日常が楽になる生き方
自分の性質を知ろう
HSPが居心地のいい環境を作るための第一歩は、まず自分がHSPであることを自覚することです。
そのことを知らなければ、周りに「がんばりが足りない奴」や「怠け者」などと言われて、自分のことを「努力ができないダメ人間」と思ってしまいがち。そうなると、真の原因がわからなくなってしまいます。
HSPは努力ができないわけでもダメ人間なわけでもありません。人の中に混じると消耗が激しいという性質があるので、人がたくさんいる環境では結果を出しにくいだけなのです。
スポーツに例えると、100m走で遅かったからといってスポーツができないと決めつけられているようなもの。足が速くなくても活躍できるスポーツはたくさんあります。剣道、柔道、アーチェリーなど。
そうした性質をしっかり理解していれば、まだ戦いようがあります。
だから、まずは自分の気質を理解することが必要なのです。
疲れに正直になる
HSPは刺激に敏感なため、普通の人より消耗が激しいのが普通です。でも、疲れやすいからといって、そんな自分を変えようと思うのは間違い。
まずは疲れやすい性質であることを自覚すること。そして疲れたら無理しないこと。人の中にいると落ち着かないので、一人になれる空間を見つけてゆっくりしましょう。
先ほどのスポーツの例でいうと、足が速くないことがわかっていながら100m走にこだわる必要はないわけです。
自分を責めてしまったら立ち止まる
自分を責めてしまったら「自分を責めやすい性格」だと思い出してください。その上で「本当に自分が悪いのかな?実は他に原因があるのでは?」と考えてみてください。
反省する気持ちは大切ですが、自分を責めるだけでは解決しないことが多いのも事実。きちんと問題と向き合って真の原因を見極めることが大切です。
「迷惑をかけてしまう」発想を一回やめてみる
退職や休職を考えたときに、どうか「迷惑をかけてしまうから」で立ち止まらないでください。
誰にも迷惑をかけずに生きている人なんてこの世にいません。みな多かれ少なかれ誰かに迷惑をかけながら生きています。あなたが退職したとしても、残った穴は必ず誰かが埋めます。
他人にばかり気を揉んで、自分の幸せと向き合うことをないがしろにしてはいませんか?
たとえばメンタルが弱いなら、メンタルが弱くてもやっていける環境を探すこと。それこそが本当に他人に迷惑がかからない生き方です。
気が進まないことは勇気を出して断る
仕事は無数にあって、向き不向きも無数にあります。わざわざ不向きな場所で長居をすることはありません。
人付き合いもそう。飲み会やサークル活動に誘われたら、本当は行きたくなくても断りづらいですよね。
「イヤな顔されないかな・・・」
「断って嫌われたらどうしよう・・・」
そんなことを考えてしまうと、なんでも引き受けてしまって、本当は望んでいない、長い長い時間を過ごすことになります。
ですがHSPにとっては、大勢の人がいる空間は消耗の元。どうしても必要でなければ、無理して参加する必要はありません。
HSPは治せるのか?
まず大前提として、HSPは病気ではありません。
そして結論からいうと、HSPの人がHSPでなくなるのは非常に困難です。
敏感なのは、いわば持って生まれた脳のクセ。
短気な性格や、そそっかしい性格や、優柔不断な性格がなかなか変えられないのと同じように、敏感に反応してしまうという気質を変えるのは難しいのが現実です。
また、HSPはそうした特徴ゆえに、鈍感な人に比べてうつなどの精神疾患を発症しやすい傾向にあるのも事実です。
でも、だからといって落ち込むのはまだ早い!
HSPの中には、そんな自分の性質とうまく付き合っている人もいます。
そこで言いたいのは「そもそも『治す』という発想を変えてみませんか?」ということ。
たとえば原始時代では、男は狩猟、女は家事ができなければいけませんでした。狩猟に参加できない弱い男は役に立たないとされ、きっと肩身の狭い思いをしたに違いありません。仲間に必要とされるための手段が「狩猟力」一つしかなかったわけです。
でも、現代では違います。
世の中には様々な職業があり、様々な適性があり、いろんな生き方があります。
どんな性質の人でも(たとえ犯罪者でも!)、受け入れてくれる人がいて、それを生かした仕事があって、ご飯を食べていける時代になってきています。
ユーチューバーやブロガーなんて20年前には存在すらしていませんでしたからね。
だから、HSPを「治す」と考えるより、そんな自分に「合う環境を見つける」というふうに発想の転換をしてみてください。その方が何百倍も大切です。
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HSPに向いてる仕事
どんな人でも大人になったら働いて食い扶持を稼がなければいけません。
そんな中、HSPはどんな仕事に向いているのか? これは悩みどころだと思います。
HSPは敏感で、人の中に長時間いると疲れやすいので、たしかに競争社会・高ストレス社会でなかなか認めてもらいづらいのは事実です。
でも、そこで諦めてはいけません。HSPにはHSPの戦い方があります。
それはHSPの長所を生かすこと。
毎日遅くまで猛然と働き、プレッシャーを力に変えて、社運を賭けたミッションを成功に導き、出世の階段を猛スピードで駆け上がっていく・・・なんていうのは、そもそもHSPのスタイルではありません。
自分を知り、そんな自分の長所が生かせる場所で戦いましょう。
仕事で役立つHSPの長所
人の感情の機微によく気がつく
敏感であることは、人の気持ちの変化によく気がつくということ。
これは鈍感な人には決して真似できない長所です。
世の中には、相手の気持ちや状況を汲み取って、適切な方向に導いてあげるような仕事があります。
カウンセラーやコンサルタントなんかがその例ですね。
直感が強い
HSPには1を聞いて10を知るような直感力の強さがあります。
わずかな仕草から、公にはされていない人間関係を見抜いたり、建前に隠されている相手の本音を見抜いたりできます。
この強みが生きるのが、実は営業職です。
意外ですよね。お客さんのクレームを最前線で聞くような営業は、本来HSPには向いていないと思われがち。
もちろんどんな営業でもいいってわけじゃありませんが、相手が求めているものを察する力というのは営業職で大いに役立ちます。
責任感があり、コツコツ真面目に仕事をする
自分のペースでやらせてさえもらえれば、HSPは真摯に仕事に打ち込むことができます。
真面目に努力して、高い完成度で成果物を完成させる。途中で放り出すのは良しとしません。最後まで責任感を持って、与えられた仕事をやり遂げようとします。
これだけ聞くと、「真面目に仕事するなんて、そんなの当たり前じゃん」と思うかもしれませんね。
でも、実は当たり前じゃありません。世の中は不真面目な人であふれています。与えられた仕事をひととおり終わらせてはみたものの、チェックさえせずに提出するなんて人はザラ。
考えてもみてください。この世の中に真面目な人しかいないなら、車のリコールや児童相談所の虐待見逃しがこんなに起こるはずがありません。みんなどこかで「まあ、この程度でいっか」と思っているからこそ、こんな問題が起こるのです。
でも、HSPは手抜きを嫌います。
真面目にきっちり仕事をする。それが当たり前になっているHSPがすごいのです。
向いてる土俵で戦おう
今の仕事や今の人間関係が辛いのだとしたら、それは甘えや弱さではないし、ましてや才能や努力が不足しているせいでもありません。
見も蓋もない言い方をすれば、そういう仕様なんです。仕様外のことばかり求められても、そりゃうまくいかないのは当たり前。
「人間に不可能はない」なんて言われますが、いくら経験を積んでもうまくならないジャンルは存在します。それを根性や努力ややる気のせいにするべきではないし、向いてない土俵にこだわる必要もありません。必要なのは冷静な見極めです。
「己を知り、敵を知れば百戦危うからず」とは兵法で有名な孫氏の言葉ですが、考えるべきはまさにコレ。
まずは自分のスペックを見極める。
そして敵(環境)を見極める。
努力や根性ももちろん必要なのですが、それだけでは通じません。
有利な場所で、有利な状況で戦わなければ、いくら優秀でも、いくら努力しても、力を発揮できずに負けてしまいます。
人一倍敏感な自分にとって、努力や根性が報われる環境は何か?
仕様外のことばかり要求される仕事なら、そもそも向いてない仕事といえます。大切なのは取捨選択。毎日の仕事が辛いという時点で、向いてない可能性大です。今の仕事が辛いのだとしたら、無理してまで会社に合わせる必要はありません。
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HSPの恋愛事情
HSPは恋愛で苦労する人が多いようです。
HSPは自己肯定感が低く、ついつい「どうせこんな自分なんて・・・」と卑下してしまいがち。
それだけに、いったん好かれていることがわかると、「こんな自分を愛してくれる人なんて他にいない!」と盲目的になってしまう傾向があります。
でも、実はここが落とし穴。
相手がいい人だったらそれでいいのですが、中にはHSPと相性が悪い相手なのに、好きでいてくれるからという理由だけで、不幸な恋愛に突き進んでいってしまいます。
結果、お互い(または自分が)「こんなはずじゃなかった」という気持ちを抱え、それでも別れる踏ん切りがつかないまま、ズルズルと関係を続けてしまう。
そんな不幸な恋愛をしないためにも、高ぶる気持ちをぐっとこらえて、本当に自分を大切にしてもらえる相手かどうかを冷静に見極める必要があります。
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HSPは誰に相談すべき?
HSPは医学的に認定された病気ではないので、ごく一部を除く医療機関では診断がつきません。
また、友人関係においても、なかなか普通の人にはわかってもらえないので、やはり同じ立場に置かれているHSPと相談しあいたいもの。
大きなサークルはないようですが、ジモティーなどの地域掲示板で相談しあえる仲間を募集することが多いようです。
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まとめ
HSPはその本人の持つ性質です。
甘えているわけでも怠けているわけでもありません。
まずは自分と向き合って、自分を理解すること。その上で、自分を無理に変えようとせずに、そのままの自分で幸せになれる環境を探しましょう。